バッファロー’66
1998年のアメリカ映画バッファーロー'66。
最高に性格の悪い歪んだ男が偶然女の子と出会う映画。
流れる映像は寒々しく、つねに歪でどこか居心地の悪い空気を常に感じさせられる。
主役のビリーは自分勝手で見ていて腹の立つぐらいで、かつ見栄っ張りで滑稽さを超えてだんだんと哀れに思えてきてしまう程。
大概の物語はいくら性格の悪い主人公でもどこか親近感や可愛げなどを感じるものですが、開始から終盤までずっとそんな調子なので少しもビリーに好感を抱くようなことはなく、上映時間の9割は災難にあったレイラに同情するばかり。
ビリーに対するマイナスではない感情を抱くとしたら少年時代以来の両親の愛情の薄さから来る哀れみぐらいですが、この映画のその開始からの9割の部分は残りの数分のエンディングに向けての長い長い助走だったとわかる。
見終わってみるとずっとただのむかつく男だったビリーが何故か可愛く、あんなに寒かった気分もほっこりとした気分になっていて、映画全体もなんだか良かったような気がしてくる。おそらくあのキャバレーのシーンでビリーは一度死んで生まれ変わったのでしょう。
Tシャツ一枚で冷房が効きすぎで、スプリングが壊れたシートで映画を見ていたら、あったかいスープを貰ってほっこりした。みたいな気分な映画。